TMS治療について
TMS治療をご希望の方は、初めにNeo梅田茶屋町で該当かどうかご相談させて頂きます。当院ではなく、Neo梅田茶屋町(梅田本院から徒歩約14分)の初診をご予約ください。
TMSは磁気パルス刺激を用いた、お薬以外の新しい治療方法です
TMSは、変化する磁場を使用して電磁誘導によって脳の小さな標的領域を磁気で刺激する非侵襲的な治療方法です。
現在、うつ病や強迫性障害へのTMS治療がFDAで認可されています。コイル、刺激の方法や頻度などは疾患によって異なります。
したがって、TMS治療を行う時は、適応の有無やコイルの選択、刺激頻度、実施回数などの治療方法がきちんと評価・選択されていることは重要です。
お薬を使用せずにTMSを実施する場合もあれば、併用することもあります。その為、初めにNeo梅田茶屋で診断と治療計画を見直し、これまでの薬物療法を最低限にするか、またはゆっくりと離脱症状が出にくいように順番に減量や中止をしたり、より工夫の余地がある場合には、更に工夫をします。また、その他の治療方法を組み合わせるなど、患者様と話し合って、効果的な治療方法が選択できることを目指します。
うつ病へのTMS治療
うつ病の治療では、対象となる脳の領域は左背側前頭前野(DLPFC)と呼ばれ、左眉から上方へ向かう線上にあります。
TMSの手順では、磁場発生器、つまり「コイル」を頭上にあてます。コイルは、変化する電流をコイルに供給するパルス発生器または刺激装置に接続されています。
TMSの副作用はまれですが、発作、治療部位の不快感、または頭痛が(まれに)起こる場合があります。
治療抵抗性の⼤うつ病性障害には、左背外側前頭前野(DLPFC)の⾼頻度(HF)-rTMSと、右DLPFCの低頻度(LF)-rTMSの有効性が認められています。
効果について
- TMS療法を受けることで、すべてのうつ病が改善するわけではありませんし、効き方には個人差があります。
- 抗うつ効果の程度は、おおむね抗うつ薬による治療効果と同等と考えられます。しかし、電気けいれん療法 (mECT)による抗うつ効果には及びません。
- うつ病患者さんの約3人に1人は抗うつ薬治療に反応しないと言われており(文献1)、そのうちの3〜4割がTMS療法に反応しています(文献2)。
つまり、抗うつ薬が効かない患者さんの6〜7割はTMS療法にも反応していないことはご留意ください。
TMS療法によって、病前に近い寛解レベルまで回復する割合は2〜3割と言われています。
また、うつ病の治療には、認知行動療法や生活などの環境の工夫などの心理社会的な治療を行うなどの総合的なアプローチが勧められます。
以上のように、抗うつ薬によって十分な効果が得られない患者さんの3〜4割が安全性の高いTMS療法によって抗うつ薬と同等の治療効果を示すことに一定の意義はあります。また、抗うつ薬による副作用、他の疾患の治療薬との飲み合わせの問題や身体疾患のために抗うつ薬を内服することが難しい方にとっても有効な治療選択肢の一つと考えられます。
再発率について
TMS療法によって、病前に近い寛解レベルまで回復する割合は2〜3割と言われています。
再発率に関するデータは十分ありませんがTMS療法が有効であった患者さんの6〜12ヶ月における再発率は1〜3割と推定されています(文献2)。
TMSが奏功して後に再発した場合、再度TMSを受けることもあります。
治療頻度について
週5回 × 4〜6週間、約20〜30分/回(1回目は約1〜1.5時間)の治療が現在大うつ病に対して有効性が高く最も推奨されている治療頻度です。
- ※ 当院では、最も効果が期待される方法がわかっている場合、推奨されている治療方法で、集中的にしっかりと治療を実施することで改善を目指します。
- ※ 推奨治療よりも少ない頻度で行うなどの方法は、効果がどの程度でるか確実とは言えません。但し、近年より少ない回数で行う集中プロトコールの知見も蓄積されてきています(1週目:3回/日×3日/週、2週目:2回/日×3回/週、3週目&4週目:1回/日×3回/週)。通院頻度については診察時にご相談ください。
強迫性障害へのTMS治療
世界で報告された臨床試験の結果をまとめて整理すると、以下のことが言えます。
アメリカでは有効性のある治療として、FDAに承認されて行われています。TMS療法の強迫性障害(OCD)への治療は、日本では今のところ保険適応はありません。
(*FDAとは、【アメリカ食品医薬品局】のことで、日本の厚生労働省にあたるアメリカの公的機関です。)
適応について
- ■DSM-5により強迫性障害(OCD)診断基準を満たす
- ■以下の1つ以上:
- 2つの示された治療法(2種類の薬物療法または1種類の薬物療法と精神療法)がそれぞれ最低8週間試行されてもOCD症状が持続しており、治療抵抗を示す。
- ■抗精神病薬、ベンゾジアゼピン、または治験中または比較的リスクの高い治療と見なされる可能性のあるその他の治療を受けている場合は、追加の治療試験よりも安全な代替療法と見なされる場合があります。
- ■TMSの禁忌にあたらない
有効性について
週5日×6週間の治療で、30%程度の症状の減少が認められています。強迫性障害においては30%の症状軽減は、患者様にとっては非常に大きなものと考えられます。
これまでに実施されたOCD患者さんを対象とした唯一の多施設治験であるDeep-TMS研究によりFDAの認可につながりました。この研究では、6週間の治療後、偽治療群と比較した場合、治療群の主要評価項目の結果に統計的に有意な改善が見られました(p = 0.0127)。
改善は、治療終了後1か月目には維持されていました。
重要なことに、治療群の38.1%は、偽治療群のわずか11.1%と比較して、重症度が30%以上減少したという反応を達成しました(p = 0.0033)。さらに、治療群の患者さんの54.8%は、症状の重症度が20%以上減少した部分奏効を達成しましたが、偽治療群では26.7%でした(p = 0.0076)。
治療方法について
うつ病へのTMS治療とは異なり、deepTMSという手法を用いて、前帯状皮質(ACC)と背内側前頭前野(dmPFC)のターゲット領域が刺激できる専用コイルを使用します。TMS刺激時に症状賦活を行って実施する、より専門的な治療です。
治療頻度について
週5回 × 6週間、約20〜30分/回(1回目は約1〜1.5時間)の治療が現在強迫性障害に対して有効性が高く推奨されている治療頻度です。
- ※ 週5日来られない場合、治療は週3日で、より長い期間にわたって行われることがあります。
- ※ 当院では、最も効果が期待される方法がわかっている場合、推奨されている治療方法で、集中的にしっかりと治療を実施することで改善を目指します。
- ※ 推奨治療よりも少ない頻度で行うなどの不確かな方法は、効果がどの程度でるかは不明です。当院ではお勧めしていません。何卒ご理解ください。
再発について
薬物療法が奏功すれば良いのですが、薬物療法や心理療法が有効でない治療抵抗性の強迫性障害の症状について改善が得られることは、一定の意義があると考えられます。報告では少なくとも実施後1か月では治療レベルを維持しているとのことでしたが、そのままのレベルを維持する可能性もあれば、症状が再燃する可能性もあります。
TMS治療によって症状が30%以上改善した状態が1か月以上継続した場合は、再度TMS治療を行うことが検討されます。
薬物療法によって十分な効果が得られない患者さんが安全性の高いTMS療法によって治療効果を示すことに一定の意義はあります。しかし、誰もが恩恵を受けるような万能な治療ではないことを事前に知った上で実施を検討する必要性があります。
その他のTMS治療
ADHDやASDへのTMS治療
ADHDやASDに対するTMS治療は、効果が得られるというエビデンスレベルは低く、十分な効果が期待できるとは証明されていないことが研究総括されています。そのため、当院では実施を見合わせています。これらの疾患に対しては、まずは確定診断を行い状態を明確にしたうえでの生活上のアドバイス、心理教育、薬物治療や専門プログラムなどの標準治療を行っています。
若年者へのTMS治療について
子供と青年におけるTMS治療は、現時点では未だ研究段階にあると研究総括されています。TMS後の神経発達への影響が不明であり、意図しない変化が起こり長期的な不利益が起こる可能性は否定できません。従って、有効性と安全性を実証するための十分な臨床試験が必要とされています。当院ではこれらのエビデンスと倫理的議論を基に、若年者へのTMSの実施を見合わせています。
TMS治療イメージ
〈TMS受付可能時間〉
・診療日の平日 9時半〜11時50分、14時〜16時20分
毎日午前中または、午後にTMS治療を行いながらお仕事を継続することも可能です。
以下はがん治療における放射線治療と同様、“働きながらの治療”のイメージです。
①午前中に治療し、午後から出勤の場合
②午前中に出勤し、午後から治療の場合
- クリニックでのTMS治療は就労しながら受けることが可能ですが、上記の様に頻回の来院が必要で、約1〜1.5か月間は平日の通院負担があります。
- 大阪駅からアクセスの良い梅田本院にTMSを設置しています。患者様の利便性に貢献し、TMS前、実施中、実施後のうつ病の治療が滞らないよう両院で連携して治療を行います。どうぞご安心ください。
- ※ TMS治療の可能性について日々新たな知見が出ています。
- ※ 通院中の主治医の先生からのご紹介により、主治医の先生の元で通院を継続しながら、TMS治療を行う方もいらっしゃいます。主治医の先生にご相談ください。
TMSの治療費用について
出来るだけ現在の生活を送りながらクリニックでのTMSを受けていただくことが可能です。現在日本では、クリニックでのTMS治療は原則自由診療扱いとなります。(※自由診療費は、高額療養費制度の適応は出来ません。)
<お支払い方法>
都度払いまたは、うつ病は20回分(4週間)、うつ病と強迫性障害は30回分(6週間)の一括払い(銀行振込)のいずれかです。
- うつ病プロトコール・・・・・1回15,000円 (税込16,500円)
- 強迫性障害プロトコール・・・1回18,000円 (税込19,800円)
- ※ 初回設定日のみ、設定費用として5,500円 (税込)が追加で必要です。
- ※ TMS実施の1回目は、TMS1回目の診療予約時にお預かりします。
- ※ 現金のみ。窓口または銀行振り込みでお願い致します。(クレジットカード不可)
- ※ キャンセルや治療中断の場合は、既定のキャンセル料を除いて後日ご返金致します。
- ※ 予約変更やキャンセルは1週間前までにお願いいたします。
期日を過ぎますと規定のキャンセル料が発生いたしますので、ご了承ください。
TMSを受けられない場合について
絶対禁忌と相対禁忌についても事前に確認させて頂く必要性があります。
絶対禁忌(原則として、TMS療法が実施できません)
刺激部位に近接する金属(人工内耳、磁性体クリップ、深部脳刺激・迷走神経刺激などの刺激装置)、心臓ペースメーカーを有する方。
相対禁忌(一般病院・総合病院では実施できる場合がありますが、当院では実施できません)
刺激部位に近接しない金属(体内埋設型の投薬ポンプなど)、頭蓋内のチタン製品、あるいは磁力装着する義歯・インプラントを有する方。
てんかん・けいれん発作の既往、けいれん発作のリスクのある頭蓋内病変、けいれん発作の閾値を低下させる薬物(三環系抗うつ薬、マプロチリン、テオフィリン、メチルフェニデート、ケタミン、クロザピン、ゾテピンなど)の服用、アルコール・カフェイン・覚せい剤の乱用・離脱時、妊娠中、重篤な身体疾患を合併する場合など。
その他、以下の方もお受けいただくことが出来ません
【 TMS療法適応外の具体例 】
- 18歳未満の若年者(18歳以上20歳未満は保護者の方の同意が必要です)
- 同一のうつ病エピソードにおいて、過去にTMS療法を受けたことがある場合
- 精神病症状をともなう重症エピソード、切迫した希死念慮や緊張病症状など電気けいれん療法が推奨される症状を示す場合
- 精神作用物質あるいは医薬品使用による残遺性感情障害を示す場合
- その他、当院の治療上の益よりも害が大きいと主治医が判断する場合
参考文献&参考URL
TMS治療の参考youtubeチャンネル
当院使用の類似機器のチャンネルです。治療イメージとしてご参考になさってください。
TMS治療のyoutubeチャンネルはこちら参考文献
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